公益社団法人 日本水環境学会
水環境懇話会 活動報告

第42回水環境懇話会 議事録(平成29年7月7日)

熊谷 和哉 氏
独立行政法人 水資源機構 経営企画部 次長

第42回水環境懇話会では、(独)水資源機構の熊谷和哉氏をお招きし、水道事業と官民連携についてお話頂いた。その後、質疑応答が行われた。

1.経歴紹介

北海道大学大学院修了後に厚生省に入省され、環境・水道行政において幅広くご活躍されている。水道行政においては、平成22年より厚生労働省健康局水道課水道計画指導室長として、官民連携、広域化、国際水ビジネス等を担当されていた。水環境懇話会では、これまで多くのご講演を頂いている。

2.講演及び討論内容

水道事業が抱える課題と今後の戦略・戦術について、官民連携の視点からご講演頂いた。

①社会情勢の変化

我が国における人口減少と料金収入の予測に関して分かりやすくご説明頂いた。

  • 今後、都市部も含めた我が国全体で人口減少が避けられない状況であるため、水道事業においても人口減少社会にどのように順応するか真剣に考えなければならない。
  • 1990年以降、事業系を中心として有収水量が減少傾向にある。2000年頃までは水道料金を上げることで料金収入を確保していたが、今後も有収水量の減少が予想されるため、料金体系を見直す必要に迫られている。
②水道事業の基本構造と問題点

水道事業に係る収支に関して分かりやすくご説明頂いた。

  • 水道事業に係る費用において施設整備費が占める割合は少なくない。水道施設は寿命が長いため、人口減少等の社会情勢の変化に柔軟に対応することが難しい。従って、将来を見据えた施設計画の立案が重要である。
  • 人口が減少しても既に整備された施設は減らないため、1人あたりの負担額が増加する。また、施設を運営する職員数が将来的に減少すると予測される。こうした事業環境の構造変化への順応が必要である。
  • 多くの大都市では世帯人口が多く水使用量が多い場合に料金が高くなる逓増制の料金体系を採用しているが、今後は世帯構成人員が減少するため、料金収入を確保するための料金体系の見直しが必要である。
③水道事業の戦略、戦術

上記の課題を踏まえて、今後水道事業がとるべき戦略についてご説明頂いた。

  • 目の前の課題を解決するための戦術と、長期的な課題を解決するための体制を整えるための戦略を分けて考える必要がある。
  • 水道事業を支える人材と資金の調達方法を考えることが水道事業の戦略である。労働人口が減少し、労働人口に対する水道職員数も減少を続ける中で、将来的にどの程度の水道職員を確保すべきか、目標を定めることが重要である。
  • 事業経営と施設整備・運転管理を分ける各種制度は現在行われている官民連携の戦術である。戦術論では官と民が協業で儲ける発想が必要であり、水道事業だけで発想を閉じず、他の分野と協業しながら水供給サービスを行うことを提案された。
質疑応答では、現在の水道行政の課題に対して国が為すべき役割に関して、活発な議論がされた。
講演の様子
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