公益社団法人 日本水環境学会
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2020年度活動報告

1. 研究委員会名
生物膜法研究委員会
2. 会員数
14名
3. 主な活動内容
第23回日本水環境学会シンポジウム(9月,オンライン)において「バイオエコを活用した環境再生保全技法の最前線と戦略的展開」と題するセッションを開催した.
国際的な展開として国内およびベトナム、中国等においては、生物膜法研究委員会で検討した自動制御生物相安定化電力削減高度化AOSDシステム処理技術等が新技術として活用開始され、水環境修復に貢献している。同時に、沈水植物浄化技法について、『いさはや新池』での導入による生物膜の原理を活用した生態工学水質浄化技法の展開に取り組んでいる。また、生物膜法研究委員会の取り組み状況と今後の開発方向などを日本水環境学会誌で公表した。前年度に引き続いて、継続的に実施した。
生物膜法研究委員会で得られた成果については、NPO法人バイオエコ技術研究所の各種資料、国立環境研究所の各種資料、産業用水調査会をはじめとする出版物などに引用しているが、生物膜法等水処理・環境水浄化技術の研究成果をとりまとめた形で出版している。また、Springerから、「Microcosm Manual for Environmental Impact Risk Assessment」を生物膜法等の環境リスク評価のためのマニュアルとして出版し、本技法の展開を図っている。更に、生物膜法を広い解釈でアジア展開を図って来ている。猪苗代湖流域への窒素・リン除去方式の高度処理浄化槽の展開を行っている。
生物膜法は、水環境修復技術として極めて重要な位置付けにあることを踏まえ、NPO法人バイオエコ技術研究所、国立環境研究所が中核となって、高度処理浄化槽、電力削減省エネルギー有機性排水処理システム、生物膜の原理を活用した沈水植物浄化システムをはじめとする機能調査、構造・維持管理について調査研究を実施している。
「環境省アジア水改善モデル事業」における水環境修復のベトナムへの技術移転は、国際的な研究開発として進展しているところである。本事業は環境省において極めて高い評価を受け更なる開発途上国展開の基盤が構築できた。また、新たにダナンの下水処理場で電力削減分を収益とする環境再生省エネ技法も展開する計画にある。これらの成果により、ETV(Environmental Technology Verification:環境技術実証)を取得し、AOSDシステムの展開を強化している。また、皇居和田倉濠において、紫外線照射によるアオコ対策の技法展開も行ってきている。
4. 今後の予定
生物膜法研究委員においては、生態環境における健全な水循環の質的量的確保を視野に入れて、流域保全再生のために生物膜法を広義の意味としてとらえ、環境低負荷資源循環型省エネルギー高度化システム構築を目途として、震災地域の復興も視野に入れた公共の閉鎖性水域、河川等に流入する汚濁負荷源の生活系、産業系、事業場系等に由来する高濃度排水、生ゴミディスポーザ排水、低濃度汚濁水を処理対象とし、自然再生可能エネルギー利用も踏まえた高度・効率化を目指したコベネフィット型の生物膜技法を導入応用した技術開発評価と効果解析・普及促進に向けて推進することとしている。同時に、アジア地域をはじめとする中国・ベトナム等および国内外を対象として、電力削減型で、窒素・リン除去型で、更には派生汚泥の資源化循環リサイクル可能型の流域保全再生健全化に貢献できる、高度化生物膜技法を国際的な環境再生保全に貢献できるようにすることを目的として、前年度に引き続き環境再生保全対策を国際的に展開することとしている。
水環境保全再生において、生物処理工学としての有用微生物を活用した微生物固定化、包括固定化、自己造粒法等の重要な技法の省エネ・温室効果ガス削減のバイオエンジニアリング、更に生態工学技法としての植生浄化、土壌浄化等による緩衝帯技術導入による水域の水質向上を目途としたエコエンジニアリングと、これらの組み合わせ技法のバイオエコシステムの広義の活性汚泥法とを組み合わせた生物膜法システムを研究開発・評価対象として、文献収集解析を含めて実施する。バイオエコシステムの国内外展開を目的として、浄化に貢献する微生物、水生生物、水生動物の機能に着目した基礎的応用的観点に立って、その高度・効率化を目指した更なる新たな研究展開を取り込み、研究活動を強化することとしている。
更に、微生物生態系からなる生物膜法等を活用したシステムにおける、生物反応に必要とされる必要酸素量を最小限にするISO国際標準を取得したAOSD(Automatic Oxygen Supply Device)システム技術、電力削減・温室効果ガス削減・水質の超高度化、汚泥の減量化農業有効利用方策等のコベネフィット型技法の普及展開を民間企業等と連携して図り、水環境再生保全のシステム技法を国内外に定着させることを重要な位置づけとしていくこととする。同時に、生物反応の高度効率化のために、経験と勘に頼るマニュアル法の限界を踏まえて自動制御の導入を強化推進していくこととする。また、環境省皇居外苑和田倉濠において、バイオエコシステムを補完する紫外線照射・凝集剤添加技法によるアオコ発生抑制につながるクロロフィルa、リン、透視度を指標としたプロジェクトを実施し成功したことから、本技法のETV取得と普及展開を図ることとしている。同時に、NPO法人バイオエコ技術研究所を中核機関として、生物膜システム技法の環境保全再生への展開を図ることとしている。
 本年度は、前年度に引き続き産官学の有機的連携のもと研究成果の相互の情報交換を含めた意見交換会と、シンポジウムを開催することとする。
2021年6月 第1回生物膜法研究委員会意見交換会
2021年9月 第23回日本水環境学会シンポジウムにおけるセッション「アジア地域などの環境再生保全のためのSDGsを踏まえた技法展開の現状と展望」の開催
2022年1月 第2回生物膜法研究委員会意見交換会
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