公益社団法人 日本水環境学会
水環境懇話会 活動報告

第45回水環境懇話会 議事録(平成30年8月27日)

モデレーター
長岡 裕氏(東京都市大学 教授)

パネリスト
赤城 誠氏(箱根水道パートナーズ株式会社)
松尾 晃政氏(あらおウォーターサービス株式会社)
左 卓氏(株式会社クボタ)

 第45回水環境懇話会では、「事業環境の変化に伴う、水道管路業務の新たな取り組み」をテーマに掲げ、パネルディスカッションを行った。
 ディスカッションのモデレーターに、長岡氏(東京都市大学 教授)、パネリストには水道管路の包括委託事業および管路更新業務の知見、ご経験が豊富な3名の方々にご参加頂き、水道管路業務への取り組みと、課題等について活発な議論を展開頂いた。その後、質疑応答が行われた。

1.経歴紹介
長岡 裕氏

 東京大学都市工学専攻博士課程を修了された後、1990年に武蔵工業大学土木工学科、現東京都市大学都市工学科の講師に着任され、現在は同学教授として、水道管路関係では濁質成分に注目した原水~浄水場~水道配水管内網における水質変換機構等の水循環システムを研究されている。

赤城 誠氏

 長崎大学大学院工学研究科社会開発工学専攻を修了された後、上下水道のコンサルタント会社等を経て、JFEエンジニアリング株式会社に入社された。現在は、PPP事業部に所属し、箱根地区水道事業包括委託の総括責任者として、箱根町北部の水道運営管理を統括されている。

松尾 晃政氏

 コンサルタントで10年間勤務され、上水道の計画や設計業務に従事された後に、メタウォーター株式会社に入社された。メタウォーター社ではDBO形式で実施した浄水場案件のプロジェクトマネージャーを経て、現在は、あらおウォーターサービスの取締役に着任されている。

左 卓

 東北大学工学部を卒業された後、株式会社クボタに入社され、主に上水道のパイプラインに関する計画、設計、維持管理等において幅広くご活躍されている。官民連携においては、群馬東部包括事業を担当するグループ長を務められており、それ以外にも管路DB案件のプロジェクトマネージャーなどを経験されている。

2.講演及び討論内容

 官民連携による管路業務事業の運営のメリットと、今後の課題等について各パネリストから具体的な案件を取り上げてご説明頂いた。

(1)箱根地区水道事業包括委託

 赤城氏より、現在実施されている送配水・給水管の維持管理、窓口対応、漏水対応、管路更新工事等についてのご説明を頂いた。管路業務の中でも、「漏水対応」の早期着手の重要性をご説明頂き、対応手段として工事関係者にスピーティーに情報共有ができるように専用チャットを利用していることなどをご説明頂いた。
 また、包括委託により「管路更新工事」を実施するメリットと今後の課題について、発注者、受注者の両者の始点からお話し頂いた。

(2)荒尾市水道事業等包括委託

 松尾氏より、本包括委託においてアセットマネジメントの策定や、管路の設計・施工、維持管理業務の取組みについてご説明頂いた。2016年4月に発生した熊本地震の経験から、「障害検知」、「復旧計画」、「対応作業」をデータベースとAIにより支援し初動対応の迅速化と、復旧時間の短縮に取組んでいることなどをご紹介頂いた。
 コミュニケーションの高速化手段としては、GPSによる作業員の地図上での位置把握と、チャット形式での情報共有を行っているとのこと。また、水道管路情報システム(水道GIS)の正確性および工事地域の管工事企業との共生の重要性、事業継続問題などについてもご説明頂いた。

(3)群馬東部水道企業団包括事業

 左氏より、管路の設計・施工を一括発注する管路DB(Design Build)方式についてご説明頂き、管路DBの発注者側のメリットとして、「発注手続き一括化による職員様の負担軽減」、「一時的な事業量増加への柔軟な対応」、「同一事業者による均一な品質確保」、「複数工区一括発注による経費削減」などを、受注者側のメリットとして、「手戻りの少ない設計」、「複数年、複数工区の一括化による工事平準化」があることをご説明頂いた。
 また、管路DB方式の拡大のためには、複数年の事業規模とすることや、現在の体制では対応困難である一時的に増加する事業での活用が特に有効であるとのこと。

 パネルディスカッションでは、長岡教授が「要求水準の定め方」、「地元の管工事企業との関係」を論点に掲げられ、要求水準で今後具体化されるべきポイントや、地元への発注による地元企業との馴れ合いリスクへの対処方法として、場合によっては工事評定が必要などの議論がなされた。

講演の様子
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